妻の里帰り

吾妻光良さんの名曲に「妻の里帰り」という曲がある。
タイトルそのままの内容で、妻が三日間実家へ帰っている間の夫の生活を歌にしたものだ。
体に悪いものばかり並べて食べたり、ごみを散らかしたままにしたり、友人を家に呼んでドンちゃん騒ぎをしたり、いやらしいビデオをまとめて五本借りたりして、奥さんが戻った時に叱られる、という既婚者ならば誰もが共感するストーリー。
里帰りではないが、妻が出勤で僕が休み、という一日もかなり近いものがある。
しかし気の弱い私は、掃除機をかけたり皿洗いをしたり、そこまで大胆にはなれない。
それでも近所のスーパーで缶ビールなどを買ってきてグレゴリー・アイザックを聴きながらだらだらと過ごしていると、「妻の里帰り」の歌詞が頭に浮かんでくる。
結婚してから妻が一人で里帰りしたのはかつて一度くらいしかないが、その時も一日だけのことだった。
正直言って三日も家を空けられると寂しくて仕方ないので、そんなに暢気に楽天的な気分にはなれないだろう。
独身時代が懐かしいとか、一人の時間を有意義に過ごしたいとか、あまり思わない。
実際一人で映画館へも行けないし、喫茶店や飲み屋に入ったこともない。それは結婚する前も同じだった。
友人と待ち合わせているときも、遅れそうだから先に店に入っていてくれ、と言われても、店の外でおとなしく待っている。
こういう性格だと今後色々な所で障害が出てきそうだ。せめて一人で映画くらいは観にいけるようにならなくては。
妻は今週休みの日に銀座へ出かけて買い物をして「重力ピエロ」を観て、かなり充実した一日を過ごしたらしく、曰く「一人でも生きていけそう」。
これは夫婦として対等な関係とは言えない。自立心を自分の中に植えつけなければ。
ということで、今度一人で休みの日は、思い切って「エル・カンタンテ」を観にいって、帰りに一杯ひっかけて来ようと決意する。
今からドキドキしてしょうがない。

Squeezin’&Blowin’

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