セント・トーマス

夏になると聴きたくなるシリーズ その三 ソニー・ロリンズ 「セント・トーマス」
このアルバムは中古盤屋のジャズのコーナーで何度も見かけていたので存在は知っていたが、いわゆる「ジャズ喫茶世代の名盤」というイメージが邪魔をして、どうも手が伸びないでいた二十代の頃。小川充さん監修の「ジャズ・ネクスト・スタンダード」シリーズや橋本徹さん、そして勿論小西康陽さんが推薦する作品ばかりを買いあさっていた僕に、「ソニー・ロリンズの『サキソフォン・コロッサス』の1曲目が最高なんだよ」と教えてくれたのは、あるギタリストの知人だった(その人は僕の結婚式の時ジャッキー&ロイの『ダブル・テイク』のCDをBGM用にと持ってきてくれた)。その人の人柄と音楽が大好きな僕は、その日から今までスルーしていたそのアルバムが俄然気になりだし、すぐその後に手に入れた。ドキドキしながらスタートボタンを押すと、聴こえてきたのはラテンのリズムとあの印象的なサックスのフレーズ。きっと様々な所でサンプルされ続けてきたはずの、時代を問わない音楽。その頃ラテンやカリビアン・ミュージックにはまり出していたので、いとも簡単に心に染み込んで行った。それ以来僕はモダン・ジャズ界の「ド定番作品」も出来るだけフォローするようになった。いや、本当はそういう作品から順番に聴いていくべきなのだろう。そういえば以前書いたレイ・ブラウンの『サムシング・フォー・レスター』はやはり彼の後期における代表作であったらしい。ド定番を敬遠するのはやめよう。ちなみにソニー・ロリンズの曲だと、デイヴィー・グレアムによる「ドント・ストップ・ザ・カーニバル」のカバーが最高に好きだ。

サキソフォン・コロッサス

サキソフォン・コロッサス