アウト・オブ・マイ・マインド

なんだか物忘れがひどい、というか物覚えがすこぶる悪い、今日この頃だ。でも考えてみると、こんな風に思うようになったのは最近のことではなく、多分学生時代まで遡ると思う。そりゃ抜群に記憶力が良いはずの幼少期に比べれば徐々に調子が下向きになるのは仕方がないけれども、それをずっと悩みの種として引きずり続けているのは非常に効率が悪い。だから気にしなければいいんだよ、と頭では分かっていても、次の日にはその決意さえ忘れてしまう。だから備忘録としてこのつまらない私事を書くことにしたのだ。
痴呆症、という病気を題材にした小説や映画はいくつかあると思うが、印象に強く残っているのが小川洋子著『博士の愛した数式』。本当に素晴らしい作品で、数学に全く興味のない自分がここまで引き込まれるとは思わなかった。数学の天才である元大学教授が、30分前の記憶が失われてしまうという特殊な病気を患い、そのためか少し頑なな性格のため、雇った家政婦がすぐにやめてしまう中、新しく派遣された主人公とその息子に徐々に心をほぐされていき、心を通わせていく、という話。その中で登場する、数学が好きなら知っているのかもしれないある数式が、キーポイントになるのだが、数式からこんなにロマンティックなエピソードをよく思いつくな、と感心して、さらに感動した。「数学は美しい」という博士の台詞に、全く知識のないこの僕も魅了されてしまった。是非これは読んだほうがよい。映画化もされたがこちらは小説読了後ほどの感動は得られなかった。少しトーンが暗すぎのように思えたので。
記憶力にいい音楽、なんて存在しないだろうが、クラシックなどは植物にもいい影響を及ぼすくらいだから、ひょっとしたら効き目があるかもしれない。クラシックに関しては全くの門外漢なのだが、昔は「威風堂々」という曲が、まさにその名の通り勇壮としてパワフルで好きだった。その威風堂々のカバーと同名異曲が収録された中村一義の『ERA』は、とても力のこもった力作だ。「君ノ声」という曲をカラオケでよく歌ったものだ。白眉はやはり「ハレルヤ」になるか。「平和を我等に」と「ウィ・シャル・ビー・リリースト」へ肉薄しようとしたその意志に感動する。

ERA

ERA