ラウンド・ミッドナイト

夜の深い時間、いつもより早く就寝していた僕は、強烈な胃の痛みに目を覚ました。
仕事の都合上、晩御飯がいつも遅いので、荒れ気味だったのは自覚していたが、いつもの比ではないくらい激しいのである。
仰向けもうつぶせも横向きで胎児のポーズをとっても一向に痛みはおさまらず、仕方がないので一度寝室から離れ、リビングのソファに座った。
それから薬箱を開けて胃薬を探すも見つからず、一緒に降りてきた猫に「知らない?」なんて言ってみた。
すると胃から突き上げがやってきた。こうなれば吐いてしまった方が楽になれるはず。そう思って意を決してトイレに入る。
全部吐き出したいと思ったが、何となく中途半端にしか出なかった。拍子抜けしつつも胃の痛みもさっきとあまり変わらないので、寝室には戻らず、自分の部屋に入った。
こういうとき、鎮痛剤の変わりになる音楽ってなんだろうか、と考えて選ぼうとするものの、胃が痛くてそれどころじゃない。
ステレオに入ったままのジャック・デジョネットジャック・デジョネット・コンプレックス』をかけた。
1曲目の「エクイポイズ」はまさにその時求めていた音楽だと思った。ピアニカの奏でるテーマのメロディーは何と優しく無垢な響きなのだろう。デトックス・ミュージック、なんて言ってしまうと途端に安っぽく感じられてしまうけれど、心の解毒に最適だと感じた。
感じたが、どうやら胃の痛みの方にはそれほど効き目はないらしい。ただ、その後再度の突き上げを覚え、トイレに駆け込むと、今度は胃の中の洗いざらいを放り出せたようだった。ふらふらしながらも寝室に戻り、再び横になると、そのまま深い眠りに付くことができた。
「エクイポイズ」のお陰と考えて、何が悪いだろうか。
ちなみに原因は、明らかに前の晩食べた、40%オフの安さにつられて買った牡蠣フライであった。