李の花

なんとなく中村智昭さんの「ムジカノッサ・ジャズ・ラウンジ」をもう一度じっくり読もうと思い、カバンに忍ばせて仕事へ出かけた。自分の中のジャズ・ブームが再来したからかもしれない。冒頭の章が「スパルタカス」とうタイトルで、ユゼフ・ラティーフの『イースタン・サウンズ』がこのディスク・ガイドの最初の1枚として紹介されている。もちろんこの盤は持っているが、よく考えたら1枚通して聴いたことはそれほどないかもしれない、と思って、i-podで探すと入っていた。電車の中でユゼフ・ラティーフのモーダル・ジャズを聴く、というのはなんだか変な気持ちがしたが、1曲目「プラム・ブロッサム」にいきなり胸をつかまれた。つかむ、といっても暴力的な意味合いはまったくなく、なんだろうこれは、という風にココロが前のめりになっていく感じだ。この不思議なアンサンブル、奇形に聴こえるリズム、先が見えない、つまり奥が深い展開に、ずぶずぶとはまっていくのが分かる。オリエンタル・ジャズというのだろうか。こういうのが今一番聴きたいのかもしれない、と感じた。もちろんその他の曲も最高だし、例の「スパルタカス愛のテーマ」は崇高で美しいジャズ・ワルツであることを再確認できたが、この1曲目の衝撃はいかんともしがたい感動だった。今ももう一度聴いているのだが、脳が弛緩と緊張を繰り返す、というか同時進行しているようだ。この曲についての評価は世間でどうなのか知らないが、とにかく好きなトラックだ。

Eastern Sounds: Rudy Van Gelder Remasters

Eastern Sounds: Rudy Van Gelder Remasters