ア・デイ・イン・ザ・ライフ

昨日、うちの猫が怪我をした。
いつもはベランダに出ても手すりまでしか上がらないのに、昨日の朝は三階の手すりから二階の屋根に降りてしまって、にっちもさっちもいかず火がついたように泣き喚いていた。うまく抱き上げようと思ったのだがなかなか近づいて来ないので、仕方なく強引に引きずり上げたところ、踏ん張っていた前足の片方から爪が割れて出血させてしまったのだ。
妻がすぐに近くの病院に連れて行き、それほど傷が深くなかったようで、包帯を巻いて抗生剤を打ってもらい、すぐに戻ってきた。猫は包帯を巻いた手をしきりに気にして、歩こうと思っても滑って上手く進まず、結局ほぼ片足でけんけんのようにふらふらよちよち歩いていた。とても可哀想に思ったけれど、どこか可愛らしくもあった、というと不謹慎だろうか。
今日は僕が休み、妻は出勤だったので、猫と二人で過ごした。普段はまったく寄り付こうともしない一階の僕の部屋に来て、膝の上ですやすや眠り出した。その後僕が移動しても、彼女はそのまま冷たいソファーの上に丸まっていた。やはり怪我と包帯でテンションが上がらず、暗く寒い部屋にいたい気分だったのだろうか。猫と一緒に聴いたシーフの『サンチャイルド』。とても静謐でいかがわしさがほとんど垣間見れない、ソフトロックの完成形。猫とぼおっと聴くのには少し緊張感が強い気がした。その後トレイにデント・メイのファースト・アルバムを乗せてみる。ゆるい。全身からきれいに力が抜けてゆく。昼間、少し日差しが窓から差し込んできて、「ミート・ミー・イン・ザ・ガーデン」が流れる。ピースフルだけど少し切ない。「オー・パリ!」、「ユー・キャント・フォース・ア・パーティー」にも同じ感覚がある。ウクレレという楽器のせいだろうか、それとも彼のルックスと声がそう感じさせるのか。今日の気分ではこちらの方がしっくり来るみたいだ。猫は完全に丸になっている。
夕方、病院に連れて行く。昨日は自分から飛び込んだキャリーバッグに今日はだいぶ抵抗した。病院についても出ることを拒んだが、強引に外へ出し、包帯をとってもらう。終わるとバッグにさっと逃げ込んだ。やはり昨日の今日だから、猫とは言えど覚えているらしい。
帰り道に突然激しい雨が雹と一緒になって降ってきた。丁度雨宿りできそうな所が無く、仕方無しに5.6キロの猫の入ったバッグを抱えて全力疾走。中の猫はおびえきって今まで聴いたことのないような弱弱しい声で鳴き続けた。俺の方がつらいぞ、なんて意味の無いことをつぶやく。
帰るとすぐ包帯がとれた足をなめ出した。しかも延々と。猫はなめて傷を治す動物だとその時思い出した。実は余計なことだったのだろうか。そう考えながら眺めていると、またもすやすや眠り始めた。大変な二日間だったね。ゆっくり休んでおくれ。そして僕は再び家を出る。

THE GOOD FEELING MUSIC OF DENT MAY AND HIS MAGNIFICENT UKULE

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