ノルウェイの森

金原瑞人さんの『翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった』(ポプラ文庫)を、名前に魅かれて購入した、という話は前に書いたのだったっけ。まあともかく、少しずつ読んでいる。主にヤングアダルトや児童書の翻訳を中心にされている方のようで、正直な話お名前を全く存じ上げなかったのだが、とても有名な方のようだ。この本は短いエッセイをまとめたもので、途中対談なども入っているのだが、だいぶ読みやすくて寝る前や電車の中で楽しく読み進めている。文体はそれほど好みというわけではないが、テーマは翻訳で、翻訳家の生活や翻訳作業の苦労話などが読めるだけで十分楽しめる。村上春樹/柴田元幸の『翻訳夜話』シリーズは何度読んだか分からないほどの愛読書だし、柴田さんの『翻訳教室』もとても面白いのだが、どうしてもファン心理で読んできたところがあるので、翻訳に関する書籍を予備知識なしで読むとどうなのかと思ったが、もっとこの手の本に手を出していきたくなった。どうも僕は「翻訳」が好きで、「翻訳家」に興味があるらしい。ちくま文庫でも一冊気になる翻訳家のエッセイがあった気がしたので、まずは立ち読みしてみよう。ところで金原瑞人さんは、芥川賞を若くして受賞した「蛇とピアス」の金原ひとみさんの実父だそうだ。道理でこれまで僕とは縁遠かったわけである。
海外文学は、学生の時は周りにつられてそこそこ読んでいたが、最近はぱったり。というか、日本語の小説さえまともに読んでいない今日この頃。寝室にはいつまでも『グレート・ギャツビー』の新訳が置いてある(読んでない本が積んであるのだ)。小説を通読するのは体力が必ず必要なので、近頃たるんだ生活をしている自分には、特に寝る前に読むにはきついのだ。とはいえ、生涯の一冊とも言える小説を自らの手で訳した村上春樹の熱い思いを、いつかは受け止めなければとは思っている。そういえば金原瑞人さんが最初に原書で読んで感銘を受けた小説として、カポーティの『遠い声、遠い部屋』を挙げていらっしゃるのを読んで、少し親しい気持ちになれた。
ということで、ライナー翻訳復活させる。取りあげるのはビル・ウィザーズの『スティル・ビル』。また時間がかかりそうだが、少しずつ前に進もう。

Still Bill

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