シンク・トゥワイス

昨日、飲み会のため水道橋に行く途中に、横浜の有隣堂に立ち寄り、文庫本のコーナーを覘くと、坪内祐三さんの「考える人」が平積みされていた。これは雑誌「考える人」の中の同名連載を集めたものだ。単行本になったことも知らなかった。「考える人」という雑誌は過去二回だけ購入したことがある。伊丹十三特集と日記特集。その二冊の間には結構な時間が経過していると思うのだが、後者の方の時にはもうすでに連載は終了していて、とっくに単行本になっていたようだ。つまり過去に一度しか連載時に読んだことはないのだが、とてもいいコーナーだと思っていた。その時は私の知らなかった中野重治という作家だったが、坪内さんのあまりバイオグラフィカルではない、どちらかといえば個人的な視点に重きが置かれた作家案内で、氏の文章が好きな私にはとても楽しめた。だがその後この雑誌を購入することはおろか立ち読みすることもなかった。表紙を見て特集内容を確認はするのだが(「考える人」は表紙のデザインがとてもよい)、この連載を思い出すことはなかった。今日この本を読み出して、一気に四分の三ほど読んでしまったのだが、やはり面白い。考える人というテーマだが、それありきの人選というよりは、自分が好きな作家を「考える人」という視点から捉えなおす、というか、自分はやはり考える人としてこの作家が好きだったのか、という確認作業のような気がする。坪内さんの薦める本を読むことが多かったので、当然ながら読んだことのある作家が多かった。しかし神谷美恵子という人は名前さえ聞いたことがなく、今回彼女の章を読んでとても興味をそそられた。それは坪内さんの紹介の仕方が巧みであるのと、引用文から放たれる彼女のオーラのせいだと思う。機会があれば彼女の作品を読んでみたい。他にもあまり読んだことのない作家もいるので(森有正唐木順三など)、少しずつ読んでいきたいと思う。多分明日にはもう読み終わってしまうだろう。少し寂しい。
「考える人」を読みながら聴いていたのはこのCDだ。カントリー・ロックの名盤(2in1)だが、僕にはソウル・ミュージックに聴こえる瞬間がある。特に名曲「シー」のようなバラード・ナンバー。でもそれはそれほど不思議なことじゃない。カントリーは白人の「ソウル・ミュージック」なのだから。

Grievous Angel

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