ラ・ブーム

ビル・クロウ著、村上春樹訳の「さよならバードランド」を通勤の電車の中で少しずつ読んでいる。自分の知っているミュージシャンの名前が出てくるだけで嬉しいのだが、今日このエッセイの原題が"The Music Goes 'Round And Around"だと知って、なおさら愛着を感じるようになった。バンバンバザールの「歌は回る」でこの曲を知り、決定的に素晴らしいNRBQのバージョンでとても大事な曲となったのだが、僕はこのタイトルが大好きだ(村上さんは「音楽は回る」と訳されていたが、僕には「歌は回る」がしっくり来る)。僕の中での解釈は、音楽は結局また同じ場所へ戻ってくるよ、離れて行くことはないよ、というものだ。一度卒業だと思っていた作品やアーティストも、再び夢中になることがよくあるが、その真理を説いているんだと思っている。音楽に限らず全ての価値観は流動的なものだと思う。それが怖くなることもあるけれど、そういうものだからしかたがない。みうらじゅんさんが「マイブーム」という言葉を流行らせたけれど、それはこのような考え方を一言でかつキャッチーに言い表しているのだと気づき、平伏してしまう。
「マイブーム」という言葉が今日ふと思い浮かんだので、上記のようなことを書いてみた。いまのお気に入り、ではなく、マイブームとすると、より客観的な評価に聞こえるから不思議だ。でも好きか嫌いかで言えば、やはりそんなに好きではないかもしれない。みうらじゅんさんを批判するつもりは毛頭ないのだが、やはり自己正当化の臭いが気になってしまうからだ。といいつつ使ってしまう場合もありますが。そういえば(笑)も大嫌いだったが、最近は(笑い)だったら何とか使えるようになった。結構あるんだな、どうしても避けられない場面が。大げさだけど。(笑)にも「マイブーム」と同じ臭いがする。
さて、性に合わない毒舌はこれくらいにして(笑い)、今日のマイブーム(笑)はベニー・シングスの肝煎りでデビューしたジョヴァンカのこのアルバム。ベニーの作品よりR&B色が強いけれど、尊敬するミニー・リパートンに通じる、人生を前面肯定するような歌声とメロディーが素晴らしい。でもミニーにはまだ敵わない。これからもっと大きなシンガーに育ってほしいと思う。それと、しばらくはベニー・シングスとのコンビは解消しないでもらいたいな、出来れば。

サブウェイ・サイレンス

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