いたち野郎

朝起きて一階のステレオ部屋へ。ジョナサン・リッチマン&ザ・モダン・ラヴァーズのアルバムを聴きながら、松永良平さん著「20世紀グレイテストヒッツ」をパラパラ。買ってすぐ通読して、それ以降も時々拾い読みをしているのだが、今日新たな発見があった。トム・アルドリーノさんのインタビューの回で、フランク・ザッパが変名で出したアルバム「クルージング・ウィズ・ルーベン&ザ・ジェッツ」のCDの、ベースとドラムが80年代の音に差し替えられている、という話。結構何度も読んだ部分なのに、何故かあまり印象に残っていなかった(ただ忘れっぽいだけかもしれないが)。最近買って聴いていなかったそのアルバムを恐る恐る聴いてみる。うむ、確かにそんな音である。でもそれほど嫌じゃない。これってアナログを聴いた人は(68年発表)違和感がかなりあるんだろうけど、そういうものだと思って聴くと変わった味わいが楽しめる。というのは、ベースとドラム以外は恐らく元のままだろうから、ヒップホップのバックトラックのような(上物がサンプリングでリズムはマシーン、というパターンの)サウンドに方向性が近くなっている気がするのだ。しかもこれは、誰のアイディアなのかわからないが(本人?)、当世風の音に寄らせるために施したものだと思うので、ゼロ年代である今聴いた印象を考慮に入れてなされた作業ではあるまいし、偶然の産物と言ってもいい。当初の思惑から全く離れたところで楽しまれているというのは、実はエンタテイメントの正しいあり方かもしれない、と思う。ザッパがドゥー・ワップの作品(徹頭徹尾)を作ろうとしたとき、懐古的なものを新しく響かせるという意図があったのではないかと推察するが、それがこのCDでどこまで伝わるのかは分からない。でもこのアルバムはこれから何度も聴くと思う。だってこれはとても斬新なアルバムだからだ。少なくとも僕にとって。といいながら、一番最初に思い出したのがT-REXの「To Know You Is To Love You」だったのだけど。

Ruben And The Jets

Ruben And The Jets