ウィ・トラヴェル・ザ・スペースウェイズ

夕べ眠れずに、泣いていたんだろう、と聞かれると、ノーと答えるが、
夕べ眠れずに、絶望と戦った、かと言えば、さにあらず、
夕べ眠れずに、一階のステレオ部屋で、草木も眠る丑三つ時、ヤン富田氏のソロ・アルバム『ミュージック・フォー・アストロ・エイジ』を聴きながら、例の「フォーエヴァー・ヤン・ミュージック・ミーム1」を読みふけっていた。
この音楽は難解だ。たとえ「難しい音楽ではありません」と本人が帯に書いていたとしても、僕には難解に思える。聴いていて、時に苦しくなる瞬間が訪れる。勿論至福のひと時や、トリップしてしまいそうになることもあるが、それがずっと続くわけではないのだ。どうしてそうなのだろう。どうして気持ちの良い状態が最初から最後まで続いてはいけないのだろうか。僕は深夜一人考えてしまった。ひょっとしてこれは、僕だけが違和感を持っているのだろうか。でもそうではないだろう。作者はあえて、このような作品にしたに違いない。「人生はつらいことだけじゃなくて、楽しい時もあるし、楽しいときだけじゃなく、つらいこともある」と、あるインタビューで語っていたけれど、本当に人生の縮図というか、半生記を作ろうとしたのだと思う。スティール・パンと実験音楽電子音楽、スタンダードとヒップホップとジャズ、ポップスとロックとダブ、洋楽と邦楽と宇宙の音楽、それを融合させ、時にそのままちぎっては投げ、この稀有なアルバムは誕生した。苦しい部分と心地よい部分がなければ、人生を投影する作品は出来ない。ヤンさんはこれを40歳で作ったそうだ。このアルバムでキャリアが新たにスタートした、というのが本当に凄い。このアルバムは難解だ。人生と同じように。

ミュージック・フォー・アストロ・エイジ

ミュージック・フォー・アストロ・エイジ