スモーキング・ブギ

煙草をやめて丸三年が過ぎたが、これまでで一番煙草を吸いたくなった日だった。理由には触れないが、やめてからというもの自分で金を払って煙草を買い求めたことも、素面で吸ったこともなかったのだが、その禁をまさに破らんというところまで来ていた。夕方くらいからその思いが募り出したのだが、ピークに達しようとするそのタイミングで、人が話しかけてきたり仕事が出来たりで、結局吸わずに済んでいた。ところが仕事からの帰り道、もういてもたってもいられなくなり、途中のコンビニで煙草(なんとなくアメリカン・スピリット)とライターを購入しよう、その前に妻に電話して「これから煙草を買って一本吸うから」と事前に報告しておこう、と思い聴いていたヘッドホンを外して携帯を取り出した。その時ふと振り返ると、後ろから知り合いが歩いて来ているではないか。彼と話しながら歩いたお陰で結局コンビニを三軒全て通り過ぎ、煙草に触れることなく無事家までたどり着いたのであった。偶然が重なっただけなのだが、なんとなく不思議な一日だと思った。しかし明日以降も吸いたい気持ちが続いてしまったら、そんなにラッキーは重なってくれないだろう。どうするどうなる、俺の禁煙生活。
煙草、といえば奥田民生の名曲「たばこのみ」を思い出す。中期ビートルズのような暗めのサイケなサウンドに、「だれがなんといおうと たばこをあいしてる」という、現在の禁煙ブームを予見するかのような歌詞(実際発表当時はそこまでファナティックな禁煙政策は存在していなかった)が乗った、まさしく民生ならではの曲である。「すこしくらい 脱ヘルシー にんげんだもの」という必殺のフレーズがたまらない。学生の頃はよく口ずさみながら煙をふかしていたものだ。おっと、あまり煙草の話はしない方がよさそうだ。

30(紙ジャケット仕様)

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